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介護事業者のみなさまへ:
事業者として心掛けておいてもらいたいこと

(1)苦情処理システム創設の背景

社会福祉基礎構造改革の流れの中で、利用者主体のサービスの在り方が求められ、社会福祉の制度は「措置」制度から、「契約」制度に移行するものとなっています。その第一段階として、高齢者介護の分野で平成9年制定の介護保険法に基づき契約制度に改まり、サービス利用者が事業者と対等な関係をつくり、サービスを利用者が選択するというシステムに変わりました。

しかし、高齢者などサービス利用者は、その心身状況や置かれている環境、そして、サービスを「受ける」という立場などから受動的なものとなりがちであり、対等な関係が本当に築けるのか不安があります。

そこで、両者の対等な関係を保障し、特に弱い立場になりやすいサービス利用者側を支援していくためにバックアップするシステムが必要になります。そのシステムとして、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業が創設されるなかで、利用契約についての説明書面の交付の義務づけが規定され、そして、苦情処理システムが制度化されました。

苦情処理システムについては、特に施設においては高齢者関係、障害者関係などを含めて社会福祉法のなかで最低基準のなかで整備することが規定されるとともに、介護保険法のなかでサービス事業者などが苦情処理の窓口となって解決に向けて対応することが義務づけられるものとなっています。

(2)苦情処理のねらい

苦情処理のねらいとして、大きくは次の2つがあげられます。

1.利用者の権利擁護

介護サービスを利用するのは高齢者であり、その家族です。それも、寝たきりの方や認知症の方など、いわゆる弱い立場にいる方々です。介護保険サービスの提供は、その弱い立場におられる方と事業者が契約を結んで行われるものです。出来高払いで利益が得られるサービス事業者との契約のなかで、場合によっては利用者側に不利なものとなる可能性があるともいえ、権利が侵害される可能性があります。苦情処理の第一のねらいは、そうならないために、サービス利用者を保護することにあります。

2.サービスの質の向上

介護保険に関わるサービス業の現状は、産業として未成熟の過程にあるといえます。地域によって、事業所によって、サービスの量や質に格差があるのが実態です。全国的に平準化されたサービスが各事業所で提供されているとはいえない問題が指摘されます。

均質化された質の高いサービスを確保するためには、提供されているサービスを評価することが大切といえます。サービス利用者が、苦情を示し、事業者がそれを受けることは当事者である利用者や家族が直接にサービスを評価することであり、このことは、サービスの質を向上させる要因となります。

(3)苦情処理の課題

ここでは、苦情解決の課題として、これまでに佐賀県国保連合会に寄せられ処理したものを踏まえて、サービス提供者として心掛けておくこととして、いくつか挙げてみたいと思います。

1.苦情を言いやすい環境をつくる

サービス利用者全員が何の不満もなく満足しているということはあり得ません。衣食住について生活全体の範囲からサービスを提供する介護サービスにおいては、常に苦情は発生するものといえるでしょう。まずは、「苦情を言われることは恥ではない。」ということを職員全体で意識することが大切です。自分たちが本気で苦情を受け止めようとしているのか見つめ直してみることが大切です。

そこで、日頃から小さな苦情をたくさん出してもらえるように心掛け、対応していくことが求められます。小さな苦情がたくさん出ていれば、大きな苦情につながりにくくなるはずです。そのために、苦情が言える環境をつくることが重要です。

直接的に苦情を言わなくてもいいような工夫として、例えば「投書箱」などを設けたり、第三者の立場で苦情を発見し、解決に取り組む「第三者委員会」を導入することもより積極的な試みかと思われます。

2.組織として対応する

苦情は、申し立てられた職員個人に問題があるというより、組織的に問題がある場合が多いといえます。複数の職員が関わりながら提供される介護サービスにおいては、組織的に問題点を改善していかなければ本当の意味で解決にはなりません。

苦情に対する担当者や責任者を明確にしたうえで、同じ苦情を繰り返さないために、組織全体でフィードバックすることが必要です。

3.苦情解決に向けての準備と迅速性

苦情が示された場合にどのような対応をするのか、あらかじめ、マニュアルを作成して備えておくことが大切です。また、マニュアルがあっても、そのマニュアルが実際に機能されなければ意味はありません。そのために、職員全体でそのマニュアルを理解し、研修を重ねておくことが大切です。

さらに、苦情が示されたら、素早く解決していくことが極めて重要です。苦情が示されたにも関わらず、その対応に時間がかかったりすると、不満は倍加されることになります。このようになってくると苦情解決は困難なものになってしまいます。

4.法令や運営基準に基づくサービスの提供

介護保険法に規定される介護サービスを提供する場合、当然のごとく同法に基づくサービスの基準を満たしておかなければなりません。介護保険に適用されるサービス共通の基準のほか、訪問介護には訪問介護の、通所介護には通所介護の、介護老人福祉施設には介護老人福祉施設それぞれのサービス基準があります。

関わりを持つ職員の一人一人が提供しているサービスに関する基準を徹底的に調べ、確認し、十分に理解しておくことが重要です。基準に則したサービスの提供でない場合は法令・基準違反になります。「よく知らなかった。」では許されません。このことはサービス提供者として最低限必要なことといえます。

5.社会一般のルールや常識を踏まえたサービスの提供

介護サービスを提供する場合、法令や運営基準だけを守ればよいわけではありません。生活の全体から提供される介護サービスにおいては、法令や運営基準には規定されにくいものがあります。例えば、施設の場合、入浴は「1週間に2回以上、適切な方法により入所者を入浴させ、又は清拭しなければならない。」というように具体的な数字が示されている基準もあれば、「離床、着替え、整容等の介護を適切に行わなければならない。」というように具体的な数字が示されていない基準もあります。

「適切」な着替えとはどのような着替えなのか、どれくらいの頻度で着替えを行う必要があるのか。その基準は一般の私たちの家族の生活を基準にするべきでしょう。繰り返すように、介護サービスは生活のサービスです。その「生活」とは、私たちが営んでいる「普通の生活」のことです。普通、私たちは毎日着替えを行っています。したがって、週に1~2回程度の着替えであれば適切な着替えとはいえないでしょう。法令や基準を超えて、社会一般のルールや常識を踏まえて介護サービスを提供することが要求されます。

6.あらゆることを想定して準備しておく

あらゆることを想定して準備しておくこと、対策を講じておくことが大切といえます。どんなに万全な対策を講じておいても事故は起り得るものです。常に、事故は起こるという意識をもってサービスを提供することが必要です。「このような事故が起こることは事前に想定されたはずなのに、なぜ、その対策が講じられていなかったのか。」というようにサービス事業者側の責任が問われることになります。

さまざまな場面において、どのような事故が起こる可能性があるのか、それぞれの事故に備えて、それを防ぐ対策をどのように講じるべきか、職員全体で検討し、備えておくことが求められます。

一方で、事故を起こさない対策が、「利用者主体」という介護保険の基本理念に反して拘束や抑制に当たる行為を伴うものであれば、それは規定違反になります。車椅子からずり落ちないためのベルトは、サービス提供者側からすれば「安全ベルト」であるかもしれませんが、利用者側からすれば「拘束ベルト」になります。利用者の立場に立ちながら、人間としての尊厳を守り、自由を束縛しないなかで、しかも安全を確保したサービスをいかにして提供するのか、みんなで知恵を絞り、模索していくことが求められます。

7.ケアプランの吟味と記録の整備

仮に、事故が起きてしまった場合、前述のように事前の対策が講じられていたのかということが問われるとともに、どのようなケアプランが立てられていたのかということも問われることになるでしょう。
策定されているケアプランが利用者のニーズを満たすものであるのか、利用者や家族の意向を踏まえたものであるのか、援助者は同プランに基づきながらサービスを提供していたのかなど十分に吟味されたケアプランの策定とそれに基づくサービスの提供が要求されることになります。

また、提供したサービスについては細かく記録を取って残しておくことが大切です。いつ、誰が、どのようなサービスを提供して、その時、利用者はどのような状況だったのか、具体的に、詳しく記録を取り、残しておかなければなりません。

さらに、その記録は単にサービス提供側だけが分かるようなものであってはなりません。家族の方などが記録の開示を要求した場合など、一般にも見て分かるような様式で記述されたものであることが求められます。

8.誠意を持ってのサービス

何よりも誠意を持って対応することが大切です。苦情が示されるうえで、その多くには「誠意が感じられないから。」という理由が伴います。そして、日頃の援助者、事業者側の利用者や家族に対する態度や姿勢が不満の程度を増大させ、苦情に作用します。

体全体で表される「誠意」は、一時的なものであってはいけません。また、一部の職員だけのものであってもいけません。常日頃から、職員全員が持つべきものです。

以上、サービスの内容に関する苦情解決に向けて、事業者側として心掛けていただき、利用者や家族から信頼される質の高いサービスの提供に努めていただきたいと思います。

問い合わせ

情報・介護課 介護保険係 (介護苦情処理)
〒840-0824 佐賀市呉服元町7番28号 佐賀県国保会館
電話:0952-26-1477

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